不動産コラム【R4/12/23】 土地の使用承諾と明け渡し

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親族間において期間の定めのない土地の使用貸借契約が長期間継続しています。そろそろ、土地を明け渡してもらいたいのですが・・・。

Question

Aは65年前に祖父Cの主導で土地(以下、「本件土地」)の所有権を取得しました。祖父Cが死亡後は、父Bが本件土地上に建物を建てクリニックを開業しました。

40年前に本件土地上に父BとAの弟Dが共有する居住用建物が建築されてからは、弟Dがその建物に居住し、医師として父Bと共にクリニックを経営しています。35年前には、本件土地上に新たにBとDが共有するクリニック用の建物が建築され、今に至っています。

そして、10年前に父Bが死亡した際に遺言によって弟DがBの遺産すべてを相続したため、現在2つの建物はいずれもDが単独所有しています。

Aは、本件土地の所有権を取得して以降、ずっと無償で使用させてきましたが、Bの死後にDとの間でさまざまなトラブルが発生したこともあり、Dに対し建物収去と土地明け渡しを求めています。

Dは、Aが他に住居を有しており本件土地を使用する必要がないこと、Dには本件土地上の建物の他に住居がなく、本件土地上でクリニックを経営して生活していることを主張して、これを争っています。

Answer

二者の関係が悪化していると認められる場合には、土地所有者による建物収去ならびに土地明渡請求は認められる可能性が高いと言えます。

期間の定めのない使用貸借契約は、使用および収益の目的を定めたときは、借主がその目的に従った使用および収益を終えることによって終了します(民法597条2項)。そして、借主が使用および収益を終える前であっても、使用および収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は使用貸借契約を解除することができます(民法598条1項)。そのため、本事案では借主が使用および収益をするのに足りる期間が経過したといえるのかが問題となります。

この点については、最高裁平成11年2月25日判決が「経過した年月、土地が無償で貸借されるに至った特殊な事情、その後の当事者間の人的つながり、土地使用の目的、方法、程度、貸主の土地使用を必要とする緊急度など双方の諸事情を比較衡量して判断すべきものであるが、使用貸借に基づく使用開始から長年月が経過し、その後に当事者間の人的つながりが著しく変化したなどの事情が認められる場合、借主に他に居住するところがなく、貸主に土地を使用する必要等特別の事情がないだけでは、使用収益をするのに足りるべき期間の経過を否定する事情としては不十分というべきである」と判断しています。

本事案と類似のケースにおいて、東京地裁平成28年7月14日判決は、前記の最高裁判例の枠組みに従って判断することを述べた上で、概要以下の事項を指摘して、借主が本件土地の使用収益をするのに足りるべき期間が経過したことを否定することはできないとして、貸主による建物収去土地明渡請求を認めました。

①貸主がほとんど本件土地を使用することなく、祖父や父、弟に無償で使用させており、居住用建物の建築以降に限っても40年以上の長期間が経過していること

②貸主が長期間にわたり本件土地から何の収益も得ていない一方で、弟は自宅や動物病院の敷地として本件土地を十分に活用し、相応の利益を得てきたこと

③父の死後、父の遺産全部を遺言によって弟がすべて相続したこと等に不公平感を募らせた貸主が、8年前に弟を相手方として申し立てた本件土地の使用料の支払いを求める調停が調停不成立となると、その後貸主と弟との間でいくつかの紛争が発生するなど、本件土地をめぐる貸主と弟との対立が表面化したこと

従って、Aと弟Dとの関係が悪化していることが認められる具体的事情が存在する場合には、Aによる建物収去ならびに土地明渡請求は認められる可能性が高いと考えます。

期間の定めない土地の無償での使用貸借契約は、親族間でよく見られます。使用貸借開始から長期間が経過しており、当事者間の人的関係が著しく変化したと認められる場合は、たとえ土地上に建物が存在していても、貸主の要請によって終了することがあります。それによって土地上の建物取り壊しが必要となるなど、深刻な事態となります。そうならないよう、このような状況におかれた当事者としては、まずは話し合いによる解決を優先させることが重要といえます。

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