不動産コラム【R4/12/7】 共有物分割(権利の濫用)

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離婚訴訟中に、別居中の夫が自宅の共有物分割請求訴訟を提起してきたのですが・・・。

Question

夫Aと妻Bは7年前に結婚し、4年前にそれぞれの持分を2分の1として自宅を購入しました。共に生活していましたが、不仲を原因に2年前から夫Aが自宅を出る形で別居するようになり、現在離婚訴訟中です。

離婚訴訟においてBが自宅に住み続けることを希望する内容の財産分与の申し立てを行なっていたところ、Aは共有物分割請求訴訟を提起して、自宅のみを独立して処分することを要求してきました。

Aによる共用物分割請求が認められると、資力がないBは自宅を明け渡さざるを得ない状況なのですが、Aの共有物分割請求は認められるのでしょうか。

     

Answer

夫による共有物分割請求は権利濫用に該当するとして認められない可能性があります。

本事案では、夫婦の共有財産を対象とする共有物分割請求が権利の濫用に当たるかが問題となります。

夫による共有物分割請求が認められると、資力を有しない妻は価格賠償によって夫の持分を取得することができないため、自宅に住み続けることができなくなってしまいます。他方、離婚による財産分与によって自宅の権利関係が定まる場合は、財産分与は夫婦共有財産全体の財産的評価を明らかにして行なわれることになるため、妻が自宅に住み続けることができる可能性があります。

本事案と類似のケースにおいて、東京地裁平成29年12月6日判決は、共有物分割請求が権利濫用に該当するかという点について、先行する財産分与手続きによらずに共有物分割手続きによって不動産の帰すうが決せられることにより、夫が受ける利益と妻が被る不利益等の客観的事情のほか、共有物分割手続きにおいて不動産の帰すうを決することを求める夫の意図とこれを拒む妻の意図等の主観的事情を総合考慮するという判断基準を示しました。その上で、以下の事項を指摘して、夫による共有物分割請求は権利濫用に該当し許されないと判断しました。

①不動産の帰すうを ◇財産分与手続きにより決する場合 →他の夫婦共有財産と併せてその帰すうが決せられることにより妻の単独取得の可能性がある。◇共有物分割手続きにより決する場合 →資力に乏しい妻が単独取得する余地はなく、当該不動産での生活を希望する妻にとって酷な結果となる。

②不動産の帰すうを財産分与手続きに委ねた場合、財産分与が確定するまでの期間について夫は住宅ローン等の負担が続くという経済的不利益を被る。しかし、従前夫は住宅ローンの肩代わりを条件として妻による不動産の単独取得を自ら提案していたことからすると、夫の被る経済的不利益は妻による債務引受等によって容易に回避し得る程度のものにとどまると評価できる。

③財産分与が確定するまでの間に相当の期間を要するとしても、その間に生ずる夫の経済的不利益は事後的に金銭的調整がなされることになる。そのため、共有物分割手続きにより夫を住宅ローンから早期に解放するために共有物分割手続きによるべき必要性は必ずしも高いとはいえない。

④財産分与手続きに委ねたほうが、夫婦共有財産の精算、過去の婚姻費用の分担、離婚後の扶養のための給付を含む夫婦間の権利義務関係を総合的に解決し得る、という利点がある。

⑤夫が離婚を拒絶しているのは夫が親権を失うことを危惧したことによるものであり、婚姻関係の修復を図ることを意図したものではない。このことから、離婚に伴う財産分与手続きが進められる余地が十分ある。

よって、本事案でも夫A・妻B間に存在する具体的事情によっては、Aによる共有物分割請求が権利濫用に該当して認められない可能性があります。

民法は、共有者は共有物について、いつでも分割請求をすることができる(民法256条1項)と定めていますが、夫婦間で離婚に伴う財産分与が問題となっている状況において、自宅を対象とする共有物分割請求が認められるのかについては、財産分与手続きとの関係を考慮して慎重に判断されることになります。ですから、不動産事業者としては共有者である以上、共有物分割請求が当然に認められると安易に判断して、間違ったアドバイスを行うことがないよう十分に注意しなければなりません。

※帰すうとは … 最終的にその状態や結果になること。行き着くところ。帰結。

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