高齢者が自宅マンションを著しく低額で売却された場合、売買は無効にならないのでしょうか…
Question
82歳の売主Aは所有マンション(以下、「本件不動産」)を買主B(個人)に350万で売却し、その中から登記費用約31万を支払い、同日、所有権移転登記を行いました。さらに両者は本件売買に伴い、BがAに対し1か月間、賃料月額22万で本件不動産を賃貸する旨の契約書を作成しました。
しかし、BはAが居住する本件不動産を訪問して、立退料30万の支払いを提案し、明け渡しを求めました。そのため、AはBを債務者とする本件不動産について処分禁止の仮処分を申し立て、同月処分禁止の仮処分の決定がされ、その後、AはBに対し本件不動産売買は詐欺によるものであったとして、取り消しを求めて提訴しました。
処分禁止の仮処分:債権者が金銭債権(金銭の支払いを受けることを目的とした債権:売掛金、貸金、不動産賃料、預金など)を持っているとき、債務者の財産状況の悪化などの事情がある場合には、裁判所は債務者に対して、財産の売却等を当分の間行なわないよう命令することができるのが「仮差押」。
しかし、金銭債権以外の債権については、こうした仮差押を行なうことができないので、その代わりに「処分禁止の仮処分」が用意されている。
Answer
公序良俗違反による契約解除となります。
■本件不動産は
- 築30年以上
- 当年の固定資産税評価額は約1211万
- リフォーム工事は約615万程度
- 本マンションの他の同条件部屋のリフォーム後の取引価格はおおむね2000万を超えている
以上のことが認められる。そうすると、固定資産税評価額の3割、取引想定価格の2割にも満たない本件売買価格である350万は著しく低廉であり、さらに買主が負担するのが一般的である登記費用約31万を売主Aが負担していることも併せ考えると、やはり本件売買は著しく低廉な価格での取引と言わざるを得ない。
■Aは売買契約締結当時82歳で、本件不動産に一人で居住しており、締結後にBから明け渡しを求められても応じず、むしろ、締結後まもなく処分禁止の仮処分を申し立てたのであるから、新住居を確保していなかったものと推測される。また、本件売買価格が著しく低廉であるのに対し、売買契約締結時に作成した賃貸借契約書に定められた賃料は高額であり、Aにとって著しく不利益で不合理なものというべきである。そして以上のような事情に、Aが売却する動機が全く見当たらないことも考慮すると、Aは本件売買により被る不利益を十分に理解しておらず、BもAが本件売買について理解しているか確認することなく漫然と売買を締結したと考えられる。以上から、本件売買はAにとって損失の大きい内容であり、Bは当時82歳と高齢で理解力が低下していた可能性のあるAに対して、暴利を得ようとしたものというほかはない。したがって、本件売買は公序良俗に反して無効である。
高齢化社会が進むにつれ、高齢者の不動産売却に伴うトラブルは増加の一途をたどっており、判断能力の低下に乗じて著しく低額で売却させられたケースも多くみられます。本件のように悪質なものは意思能力の欠如、錯誤、公序良俗違反などを理由として、売買契約は無効となります。
不動産事業者としては、高齢者への十分な説明や本人の意思能力の確認に努めることが大事でしょう。
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