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売主の意思能力が相当程度低かったとして、買主の売買契約および媒介業者の媒介契約の成立が否定された事例

媒介業者Xの媒介で、A(法人、建築工事・不動産業)はB(契約時82歳)所有の土地上に存するB居住建物をBの費用で取壊した後にその土地をAへ引渡すとする売買契約を、売買代金3,330万円にて締結しました。しかし、引渡し日を経過してもBが引渡さなかったため、Aは約定の違約金333万円の支払いおよび手付金50万円の返還を求めました。

また媒介業者Xは、Bと専属専任媒介契約を締結し媒介を行なったが、媒介報酬138万円余のうち89万円余が未払いとしてBに支払いを求めました。(契約時手付金50万円を媒介手数料に充当)

◇Bの主張:売買契約、媒介契約を締結した事実はない。また媒介契約書のBの署名は媒介業者Xのものと思われる。

◇高度のアルツハイマー型認知症に遅くとも契約の6ヶ月後には罹患していたBは、締結当時も意思能力が無い状態であったというべきであり、いずれの契約もその状態で締結されたのであるから無効である。                       

 

 

 

 

判決の要旨

AとXの請求は以下の理由で棄却されました。

  • 媒介契約書の署名について、Bの面前でXは署名したというが、それをもってBがXに依頼したとはいえない。
  • 媒介契約が成立したとはいえない状況で、売買契約が成立したとはいえない。
  • 売買契約は一応Bの署名であるが、媒介契約記載の4,070万円に対し、3,330万円と2割近く減額されていて、Bが短期間に減額に応じたのは不自然である。
  • Bが本件建物を解体して引渡すという大事なことが契約書に記載されていない。
  • 売買契約書に収入印紙の貼付がなく、残代金支払日の記入がない。以上のことからBが十分理解して契約書に署名したとは考えにくい。

 

自宅売却という売主の重大な取引にもかかわらず、媒介業者が買主の手付金持参により売買契約を締結したとし、しかも売主の領収書を買主が受領していない本件取引は、不自然なところが多く、意思能力が低下した高齢者を狙った「押買い」ではないかと疑われるような事案です。

押買いについては判例を題材に議論がなされており、相手方の無思慮に乗じて契約を締結したのであれば、契約の無効取消しや不法行為による損害賠償が訴訟になれば認められる可能性は高いでしょう。

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