不動産トラブル【R4/6/01】私道の掘削承諾

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私道所有者にライフライン工事のための掘削工事承諾を拒否されたと相談されているのですが…。

Question

宅建事業者Zが以前仲介した顧客Aからの相談です。建物所有者Aは建て替えに際し、既存の給排水管・ガス管が老朽化し継続使用困難なため、敷地に唯一隣接する私道に埋設された給排水管・ガス管から敷地内に上下水道・ガスを引き込む導管を新設することになりました。

そこでAは、私道所有者のBに対して導管新設の掘削工事承諾を求めたのですが、承諾を拒否されてしまいました。なお、工事は新設管をすべて集約して掘削範囲を限定させた上、都度埋め戻しをする、Bへの損害が少ない方法とされています。

Answer

このケースでは、私道所有者は掘削工事の承諾をしなければならないと考えられます。

現代の生活において、必要不可欠な上下水道・ガス等のライフラインを利用するための導管等の設置にあたり、他人所有の私道等の隣地を使用せざるを得ない場合は、隣地の使用や掘削等をめぐりトラブルになることがあります。

民法第220条、第221条1項および下水道法第11条は、隣地の利便のため必要な排水を受忍すべき土地所有者の義務を定めていますが、掘削工事について直接規定しているわけではありません。しかし本事案と同様のケースにおいて東京地裁は、上下水道・ガス等のライフラインが現代生活に必要不可欠であることから、前述の民法および下水道法を類推適用し、給排水管・ガス管の導管設置のために必要範囲で隣接する私道の掘削工事を行うことについて、私道所有者は承諾する義務があると判断しました。

よって本事案においても、Aは導管新設の掘削工事は必要であり、かつBへの損害が少ない施工方法であるため、Bに承諾義務があると考えられます。

なお、前記裁判例は掘削工事による損害について、損害が生じた場合に別途解決されるべき事柄であり承諾義務の有無に影響を及ぼさないと判断しています。

トラブルを防止するためには、隣地の使用に関して民法等の解釈による承諾ではなく、隣地所有者から同意書等による承諾を得ておくことが肝要です。すなわち、不動産の売買にあたり隣地の通行や掘削が必要な場合には、売買契約において売り主が隣地所有者から同意書を取得する等の義務を課すことが望ましいでしょう。

 

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