不動産トラブル【R4/5/23】源泉徴収義務

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海外居住者と推測される売り主に売買代金を支払う場合、買い主事業者に源泉徴収義務はある?

Question

宅建事業者Zは売り主Bと不動産の売買契約を締結し、売買代金約7億円を支払いました。Bが国内居住者でない場合、Zは売買代金支払い時に源泉徴収を行なわなければならないことから、Bに国内居住者であるかを質問したところ、Bは「そうですよ。ちゃんと日本で所得税も住民税も納めていますよ」と回答したため、Zは売買代金を支払う際に源泉徴収を行なっていませんでした。他方で、ZはBから米国内の銀行口座約10ヵ所に分けて売買代金を振り込むよう指定されていたほか、Bの住民票や不動産登記上の住所を3~4回訪問してもBが不在だったという事情がありましたが、Zは前記の質問以上にBの状況を確認していませんでした。

ところが実際にはBは米国に生活の本拠があり、直近1年間の日本滞在日数は半分未満である上、日本へは米国発給の旅券を用いて渡航していました。そのため税務署はBが「非居住者」に該当し、Zが源泉徴収義務を負うとして、ℤに対し売買代金の10%につき納税告知処分を行ないました。Zは所得税法の解釈について、Bが非居住者であるかが判別困難な場合に源泉徴収義務を負わないという限定解釈をすべきだと争っています。Zは源泉徴収義務を負わなければならないのでしょうか。

   

Answer

買い主事業者が源泉徴収義務を負う可能性が高いでしょう。

所得税法によれば、非居住者(日本に住所がなく、かつ1年以上引き続いて居所がない者)が国内にある不動産の譲渡対価(売買代金)の支払いを受ける場合には、支払い者(買い主等)はその10%を源泉徴収しなければなりません。この制度は、国内の不動産を譲渡した非居住者が無申告のまま売買代金を国外に持ち出して出国してしまい、徴収が困難となる事例に対処すべく創設されました。

本事案と同様のケースにおいて、東京高裁判決は、売り主が売買代金の送金先に約30もの米国銀行口座を指定したこと等から、米国内に生活の本拠を有している可能性を検討すべきであったと評価しました。さらに特段の支障がないにもかかわらず、買い主が売り主に対して出入国の頻度、米国の家族・資産関係等を確認していないことから、買い主の源泉徴収義務を否定すべき理由はないと判断しました。よって本事案においても、Zは所得税法に従い源泉徴収義務を負う可能性が高いでしょう。

 

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