不動産トラブル【R3/9/24】 契約不適合責任

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建物に不具合が発覚。仲介業者が責任を負いますか?

Question

不動産業者Zは令和元年6月、築23年6階建ての既存ビルの売買を仲介しました。売買契約の際には買い主Aに物件状況報告書を交付。そこには、雨漏り、腐食、給排水管の故障をいずれも発見していないと記載しました。

ところが、引き渡し後、ビルに、外壁の爆裂、5階の雨漏り、1階配水管の漏水、4階ベランダの腐食等の不具合があることが発覚しました。そこでAは、発見された不具合はいずれも隠れた瑕疵に当たるとし、Zに瑕疵担保責任に基づく損害の賠償を求めました。

しかし、Zは、Aの主張する不具合はいずれも通常の経年劣化によるものであって瑕疵には当たらないから、損害を賠償する必要がないとして争っています。

 

Answer

通常の経年劣化によるものであれば、必ずしも損害賠償をする必要はありませんが、改正民法では経年劣化が契約内容に適合しない場合には損害の賠償をする必要があります。

建物は、築年数が経過すれば劣化損傷するので、劣化損傷の存在は既存建物の売買の前提となっています。既存建物の売買では、経年劣化の存在を考慮して売買代金が決まりますので、経年劣化の程度が当事者の想定している範囲であれば、建物の不具合は瑕疵とはいえません。

改正民法が令和2年4月1日から施行されましたが、改正前の民法第570条、第566条は、売買の目的物に隠れた瑕疵がある場合は、買主が損害倍書を請求できると規定していました。本事例でAが主張する不具合は、いずれも経年劣化によるものと考えられ、瑕疵にあたるとはいえません。また、契約時にAに交付された物件状況等報告書に、雨漏り、腐食、給排水管の故障はいずれも発見していないと記載されていました。この点について、同様の事例(東京地裁平成28年7月14日判決)は買主に交付された物件状況報告書は、売主が現在知っている売買物件の状況について説明したものであって、その記載内容がすべて客観的事実に合致することを前提として取引内容が決定されるものとは考えられないから、同記載の存在によって売主が瑕疵担保責任を負う事にはならないとしています。

よって、ZはAに対して損害を賠償する必要はありません。