不動産トラブル【R4/4/15】 決済の延長と融資解除特約

 カテゴリー:   タグ:  | | | |

融資解除特約付きの契約で決済出来なかった場合はどうなる?

Question

宅建事業者Zは、土地建物の売買を仲介しました。その際、債務不履行の場合の違約金を売買代金の10%とする特約を締結するとともに、「融資解除特約」として、買主Aが決済期限までに金融機関から融資の承認を得られない場合に違約金の負担なく自動的に売買契約が解除される特約を締結しました。

その後、Aが当初の決済期限までに融資の承認を得られなかったため、売主の承諾を得て決済期限が延長されました。しかし、その後さらに2回にわたり決済期限が延長されましたが、延長後の決済期限を過ぎても融資の承認は得られませんでした。そこで、BがAに対して代金支払い債務の不履行を理由に売買契約を解除するとともに違約金の支払いを請求しました。これに対し、Aは、融資解除特約により売買契約が自動的に解除されているため債務不履行はなく、違約金を請求される理由がないと争っています。

Answer

融資解除特約を用いる事はできず、買主は違約金を支払う必要があるでしょう。

本事案の融資解除特約は、買主が金融機関から融資の承認を得られない場合に買主が何らペナルティを負うことなく契約を解除できるものであり、一方で解除時からの別の顧客を見つけなければならなくなる売主にとって不利な内容です。特に、本事案のようにAの都合で決済期限が2度、3度と延長されている場合には、Bが一方的な不利益を被り続けることになってしまいます。

このような事情を考慮すると、買主の都合で決済期限が延長された場合に融資解除特約の期限も同様に延長されるためには、売主との間で明確な合意があったといえる場合でなければならないと考えるべきです。従って、Bが融資解除特約の期間延長に、明確に合意しているわけではない以上、Aが融資解除特約を用いることはできないと考えられます。

不動産の売買契約においては、契約当事者のニーズに応えるため、さまざまな特約が付されることがあります。しかし、その特約が、本事案の融資解除特約のように当事者の一方だけに利益・不利益を与えるものである場合には、その特約がどこまで有効であるのかという解釈問題が生じる可能性があります。その特約自体が有効であるのか及び状況の変化に応じて効力を失うかどうかの判断が難しい局面があります。

大分の不動産売却のことならオンリーワンへ★